UNITE 2013 リチャード・ギャリオットが語る、ゲーム開発のいままでとこれから


8月28日から30日の間、カナダのバンクーバーでUNITE 2013が開催されました。
UNITEとは、ゲームエンジン"UNITY"に関わるゲームデベロッパー、パブリッシャー、ホビイスト等に向けた総合的なカンファレンスです。
開催初日28日の午前にリチャード・ギャリオットによる講演が行われ、その中でゲーム開発者として40年のキャリアを振り返りつつ、UNITYによる新しいゲーム開発環境の魅力について語りました。
http://youtu.be/gKYrdTZc5YE?t=1h56m15s

その講演の中から興味深い内容をかいつまんで紹介します。

従来のゲーム開発環境の問題

・1979年のアップルⅡ(Ultima1-2)から1981年(Ultima3)のIBM-PCの間に、CPUクロック、イメージRAM、メモリ、記憶媒体の容量が10倍に増加。
1990年代(Ultima8)には、さらに各PCスペックの数値が10倍に増加。
2000年代を迎えると、PCスペックは数十倍へと飛躍的に向上する。
・PCスペックの向上は開発費の高騰と開発期間の長期化を招いた。
多くの開発チームはプロジェクトごとにゲームエンジンやゲームオブジェクトを1から作り直しており、これが開発コスト増大の原因となっている。

UNITYによるゲーム開発のメリット

・豊富なアセットメントや、UNITYエンジンの巨大な開発コミュニティの存在。
コミュニティでは開発者同士でテクニカルな情報を交換し技術面の負担を軽減。
クリエイターは開発リソースをコンテンツ製作により多く割り当てることが出来る。
そしてコンテンツのユニークさこそがそのゲームの魅力である。

・現在の開発環境ではNCsoft時代よりテクニカルスタッフの人員は約半分で済んでいる。
・UNITYアセットストアのゲーム素材を起用することにより、一ヶ月半でKickstarter用のデモを開発。
さらにそこから3ヶ月で製品版のクオリティに近いゲームビルドを完成。
・Ultimaシリーズの開発は5年近い開発期間を要したが、UNITYは200万ドルの予算と一年半の開発期間で実現(予定)。
さらに開発期間の短縮によるコストの圧縮と少数精鋭でのゲーム開発体制が可能に。

40年のキャリアが語る"ロールプレイングゲームに必要な5大要素"

・現実の社会問題との関連性
Ultima4では徳を守ることの意義、5では徳の政治利用がもたらす問題、6では人種差別と相互理解による融和、7では邪悪な者による信仰心の悪用、といったテーマを扱った。
現実社会の問題を扱うニュースは、ゲームのストーリー製作の源泉となる。

・わかりやすいネーミング
ゲーム内の人名や固有名詞は、ラテン語系の音を持った覚えやすく発音しやすい音のものを採用する。これはプレイヤーがゲーム世界の把握や単語の記憶を容易にする為に効果的。

・そのゲーム世界における"絶対正義"を簡潔に示しておく
Ultimaでは3つの原理(愛、真実、勇気)から8つの徳が派生している。これらの徳の概念はUltimaの世界では重要な社会通念となっており、シリーズを通してストーリーの核となっている。
さらに8つの徳は8つの街と関連付けられ、また、それぞれの徳は相応するシンボルをもつ(正義の徳は天秤、慈悲はハート、武勇は剣など)。
これらゲーム世界の核となる概念は、シンボル化してプレイヤーに明確に示しておく必要である。

・ユニークなカルチャー
ルーン文字やタビュラ・ラサのエイリアン文字など、その作品の中のユニークなカルチャーの存在はゲーム世界により説得力を持たせる。

・"アイコン(偶像)"としてのグラフィック
分かり易いシルエットのオブジェクトは、プレイヤーの記憶にいつまでも残る。

セレクティブ・マルチプレイヤーゲームの概念について

・従来のMMOではゲームサーバ(UOでいうシャード)ごとにプレイヤーが隔離されており、サーバをまたいで交流することが出来ない。
さらに一つのサーバに多くのプレイヤーがいるにも関わらず、知らないプレイヤー同士がコミュニケートするシーンは非常に限定的である、といった問題がある。

・セレクティブ・マルチプレイヤーのシステムではゲームサーバは一つだけ。全世界のプレイヤーと交流が可能。
自分のインスタンスにフレンドを招待したり、条件をつけて他のプレイヤーをフィルタリングしたりすることも出来る。
また、ゲーム進行度が同程度のプレイヤーと一緒に協力してシナリオを進めることも可能。

ユーザーと共に進めるゲーム開発

・Kickstarterによる資金調達はパブリッシャーの影響力を排し、よりユーザーサイドに立ったゲーム作りを実現する。
・公式フォーラムには開発者も参加し、ユーザーと直接ディスカッションする。
・週単位で開発者がライブ配信を行いゲームのキーとなるシステムや概念を説明し、ユーザーからの質疑応答をリアルタイムで行う。
・ユニティ・アセットストアを通じて、プレイヤーから提供されたゲーム素材を開発に生かす。また、ゲーム開発側が作成したプロクオリティのゲーム素材をユニティ・アセットストアを通じてユーザーやインディーズゲームの開発者に提供する。

以上がリチャード・ギャリオットの講演の概要になります。
講演の中でThanks UNITY、というフレーズが何度も出てきたあたり、リチャードはUNITYの開発環境に満足しているようですね。
次回のバージョンアップUNITY ver.4.3では、2Dゲームに特化したゲーム製作環境も新たに提供される予定です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

■過去記事アーカイブ