リチャード・ギャリオットインタビュー in PAX East 2016

リチャード・ギャリオットインタビュー in PAX East 2016 直近のリチャード・ギャリオットインタビューの概要をまとめてみました。

Gamers Nexusインタビュー: MMO業界の問題とSotAの役割について

  • Q: キックスターターによる資金調達など、従来のようにパブリッシャーからの支援を受けずに開発するスタイルについてどのように考えていますか?
    • この方式で成功したもっとも顕著な例としてEVE ONLINEを挙げたい。これはまず最初に、コア層向けを想定した洗練されたシステムによりコア層を引っ張り、文字通りそれを芯にして一般ゲーマーをさらに引っ張ることに成功している。元々はコア層に向けて作り出したものだったのに、規模をメガ化することに成功したんだ。
  • WoW(World of Warcraft)はアメリカでもっとも規模の大きいMMORPGだ。このゲームのパブリッシャー(ブリザード社)もとても大きな会社で、ゲームはアップデートされ続け、まさに命をかけてプレイしているようなハードコアユーザーも沢山抱えている。よって、WoWをコピーしたようなMMORPGタイトルも数多くある。WoWは頂点を極めたものの、その後のMMO業界に革新は起こらず、WoWはユーザーの保守に努め、他のパブリッシャーはWoWの劣化コピータイトルをリリースする。MMOはロングランで利益を出すスタイルだから、あまり冒険的なタイトルは出せない。よって、業界全体で、分かってはいるものの縮小再生産をせざるをえなくなってしまったんだ。
  • しかし、ここで少し目線を変えて、アメリカ以外の市場に目を向けてもらいたい。NCsoftでTabula Rasaのプロジェクトに関わったのだが、NCsoftはメガタイトルのリネージュを運営している会社でもある。そのユーザー数はWoWやEverquestよりも多かった。つまり市場の大きさは韓国のほうが上だったんだ。
  • Tabula Rasaのアメリカでの売り上げは"そこそこ"だったものの、我々は小規模ながら成功した、と考えていたんだ。しかし、NCsoftから見れば、つまりリネージュの売り上げを考えれば、我々が成功だと思っていた売り上げは、彼らにとって微々たる数字にしか映らなかったという現実があった。
  • 米国の大規模なパブリッシャーが手がけるMMOタイトルの未来は閉塞感が漂っているものの、クリスロバーツのStar Citizenなど、パブリッシャーに頼らずに数百万~数千万ドルの資金を集めるプロジェクトも存在している。
  • Q: SotAはアジアのコア層に向けたマーケティングも視野に入れているのですか?
    • SotAはコア層を想定してリリースするタイトルになる。そもそも、私の手がけてきたUltimaシリーズは、常にコア層向けに作り続けてきたんだ。30年以上ゲームを作り続けてきたおかげで、私の開発チームの中には、私の手がけたタイトルをプレイしたことがないスタッフもいるくらいだ。彼らにはいつでも私が手がけていたタイトルを、いつでもプレイできるように環境を整えている。ゲーム開発者でさえ私のゲームをプレイしたことがないのだから、今のメインとなるゲームユーザー層の多くは、私が手がけたタイトルをプレイした経験が無い、と考えることもできる。
    • こういった新しいゲームユーザー層にUltimaのような"ディープなゲーム体験"をしてもらいたい。例えばFPSのタイトルであれば、爽快感とリッチなビジュアル表現がウリになるだろう。しかし、Ultimaのような複雑でディープなプレイ後のあの感覚は得られないと思う。
      そういった経験の無い新しいゲームユーザー層にもSotAをプレイしてもらいたいと思っているんだ。ただし、複雑さを押しつけるのではなく、プレイしたときの手応えをしっかりと感じられるような、そういった体験を新しいユーザー層に届けたいんだ。これは私と開発チームにとっての"ビッグ・チャレンジ"だと位置づけている。
  • SotAはEverquestのようなハードなデスペナルティは採用しない。しかし、ハードコアなPvPユーザーのために、ハイリスク・ハイリターンなシステムも選択出来るようになっている。
MASSIVELY OVERPOWEREDによる、PAX 2016でのリチャード・ギャリオットインタビューの概要。

http://massivelyop.com/2016/04/25/pax-east-2016-richard-garriott-discusses-shroud-of-the-avatars-launch-and-future/
  • 7月のファイナルワイプが最後のデータワイプの機会であり、それ以降はキャラクターデータや資産は永久にリセットされることはない。
  • 12月(かそれより前)をメドにストーリーコンテンツを完成させ、リリースするつもりだ。
  • ストーリーコンテンツが揃った時点で"完成"かと言われれば、そうではない。SotAはそれ以降も"ずっとアップデートされ続けるタイトル"になる。これで開発は一区切り、というラインは設けていない。
  • 従来の開発プロセスは、システムのアルファ、コンテンツのベータ、バグ無しでのロンチ(デバッグ作業)、という3段階に分けて考えていたが、実はこれらは密接に関係していて簡単に分けて考えていいような性質のものではないことがわかった。これらは段階ごとに移行するのではなく、すべてを同時進行させなければならなかったんだ。
  • 従来の開発プロセス進行から脱却すると、従来でいうところのロンチの定義も変わってくる。
  • SotAのロンチのタイミングに今年中を選んだのはなぜか?それは第一に、プレイヤーのモチベーションを考慮した結果だ。一体誰がワイプされる運命の家のために、お金を貯めたり労力を使おうと思うだろうか?本当に価値あるテストデータを得ようと思うなら、プレイヤーが納得できる理由をこちらが用意しなければならないだろう。
  • MMOコンテンツを先にリリースする理由は、マネタイズのためだ。アドオンストアなどのコンテンツは、ストーリー実装段階前でも商品としての価値をもっており、プレイヤーはストーリーコンテンツの実装に関係なく、アドオンコンテンツを購入してくれるだろう。それで得ることのできた資金はストーリーコンテンツの開発に注入することができる。
  • 課金コンテンツの投入をロンチ前に前倒しすることについては難しい点もあるが、開発の進行とユーザーにとって双方にメリットをもたらす可能性も秘めている。
  • 7月一杯で従来販売していた特典付きの出資枠をすべて販売終了にする。しかし、ユーザーに対して定額課金は要求せず、あくまでアドオンストアで販売する"コスメティクス"の利益によって、運営費を賄っていく予定だ。コスメティクスは期間限定販売を基本だ。期限や規定販売数を迎えたものは廃盤にして、新しいものとどんどん入れ替えていく。同じものをずっと売り続けることはしない。
    訳註: ここでいうコスメティクスは、デコレーションや衣装など、ゲームバランスに関与しない贅沢品の類の意だと解釈しています。
  • しかし、定額課金制がいい、というユーザーの声も根強くあることは把握している。場合によっては、将来的に課金スタイルに多様性をもたせる判断をすることもありうる。ユーザーと運営にとって、もっとも有益な課金方式を今も模索している。
  • エピソード1のストーリーラインのエンディングは1つだけだ。しかし、その後の拡張エピソードごとに、ストーリーはどんどん細かく分岐していくデザインになっている。エピソード2では"自分だけのストーリー展開"をもつことになるだろう。
  • エピソード2では乗り物によって他の大陸へと移動することができるようになる。エピソード2を購入していないユーザーは、従来の大陸から外にでることはできない。これはストーリー的にも、コンテンツ制限の実施においても、合理的な仕様になっている。





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